RPAツール導入において、「対象の業務を自動化できれば終わり」というようなイメージを持つ方が多いかもしれませんが、人間の業務は残ります。
その1つがロボットの管理です。管理されていないロボットは「野良ロボット」と呼ばれ、誤動作したときに業務に対し重大なトラブルを引き起こしかねません。
今回はそれを防止するためのロボットの管理方法について解説していきます。
ロボットの管理はRPA運用において必須業務
RPA導入のメリットの1つとして挙げられるのが、ノンプログラミングで作業の自動化が可能なため、現場で必要なロボットを作成して業務効率化できることです。しかし、それに起因するデメリットも見逃せません。
RPAの導入に携わった担当者が異動・退職した後、新担当者が稼働中のロボットに対して、どのような業務に使用されているか、どんな手順で作業を実行しているのかなどを知らないと適切に対応できない恐れがあります。
上述した通り、管理者不在のロボットを「野良ロボット」と言いますが、野良化したロボットが停止したり、誤作動を起こしたときに原因究明・復旧作業等に時間が掛かると、対応にあたった従業員の業務に支障が出るかもしれません。
また、ロボットに任せていた業務が停止に追い込まれる可能性も出てくることでしょう。
よって、ロボットの管理はRPAを運用するにあたり、必須の業務となるのです。
ロボットの管理を成功させるPDCAサイクルの構築
管理業務の手法として、PDCAサイクルは有効な手段の1つです。
サイクルを回すことで、ロボットにおける課題の認識、改善の実行などの管理に必要な業務をスムーズに行えることでしょう。
次章以降ではロボット管理において、PDCAサイクルを実践するための具体的な方法を次の2点に分けてをご紹介します。
- RPAの稼働状況をモニターする「カンバン方式」
- RPAの改善を定常化する「KPT形式」
順にみていきましょう。
PDCAサイクルとは
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し行うことで、継続的な業務の改善を促す手法のことを指します。
ロボットの稼働状況をモニターする「カンバン方式」
RPAの稼働状況を定期的に確認する方法としておすすめなのが、「カンバン方式」です。
カンバン方式では、「作成を予定しているロボット」「稼働中のロボット」「停止中のロボット」など、稼働状況に応じてロボットを分類し付箋やアプリなどを使用して管理します。
(次の画像例では「jooto」を使用しています。基本的に無料で利用できるため、おすすめです)
複数の業務や部門でロボットが作成されはじめると、ロボットの管理が疎かになりがちです。
カンバン方式ではロボットの稼働状況をコストをかけることなく、比較的簡単にモニターすることができるでしょう。
カンバン方式にこだわる必要は有りませんが、導入前後で速やかにPDCAの「P」(計画)、「D」(実行)のチェック体制を整えておけば、RPA導入後に速やかにトラブルをキャッチ・回避できることでしょう。
RPAの改善を定常化する「KPT形式」
一定期間RPAを運用すると、様々な課題が出ることでしょう。速やかに改善していかなければ、業務に致命的な支障が出るかもしれません。
今回は、そのような課題を共有・改善する手法として、「KPT形式」をおすすめします。
KPT とは、「Keep」「Problem」「Try」の頭文字をとった言葉で、業務の振り返り手法の1つです。
- 「K」(Keep)にはロボットを作成・運用して上手くいっていること、どのような成果が出ているか、などを書きます。
- 「P」(Problem)では運用中に発生した課題・トラブル、改善すべき点などを書きます。
- 「T」(Try)では「P」で書いた、課題・トラブルへの具体的な対応策や今後追加したい処理などを書きます。
KPT形式にこだわる必要はありませんが、現場とともに動くロボットは課題の発生スピードや求められる改善スピードも速いと考えられます。
導入前後で速やかにPDCAの「C」(確認)、「A」(改善実行)の体制を整えておけば、ロボットの運用と同時に改善することができ、RPAツール導入の効果が得られやすい環境作りに繋がるでしょう。
おわりに
業務効率のために導入したRPAが、ロボットの管理が上手くいかないことで、逆に現場へ負担をかけてしまうリスクがあります。
体制を整えたうえで、対処しないとRPAの導入失敗に繋がりかねないでしょう。
今回は、ロボットの管理手法として、2つの実践方法を紹介しました。RPAツールの運用に少しでも参考になれば幸いです。
コラム執筆にあたり下記の書籍を参考にさせて頂きました。
参考書籍:「いちばんやさしいRPAの教本 人気講師が教える現場のための業務自動化ノウハウ」
RPAとは何か?から始まり、ツールの選定基準や導入ポイント、運用方法など、RPAについて必要な知識が分かりやすくまとめられています。
RPAの初心者にとって心強い入門書です。