近年、導入シェア拡大を続けるRPA。
今回はその普及の背景を探っていきます。
生産年齢人口の減少
平成28年に総務省が出した情報通信白書によると、少子高齢化の進行により日本の総人口は2008年をピークに減少に転じおり、2015年の総人口(年齢不詳人口を除く)が1億2,520万人なのに対し、2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれています。
では、少子高齢化がこのまま進むと私たちにどのような影響が出るのでしょうか。最も懸念されるのは、経済への影響です。
経済活動は労働力人口に左右されますが、このまま少子高齢化が進むとそのペースに合わせて労働力人口も急激に減少します。いわゆる生産年齢人口が極端に減ってしまうのです。
冒頭の情報通信白書では、日本の生産年齢人口についても言及しています。
日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じており、2015年の生産年齢人口(15歳~64歳)が7,592万人なのに対し、2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると指摘しています。
経済が縮小すると国際的な競争力は低下する上、労働力不足のため長時間労働が深刻化し、ワーク・ライフ・バランスも改善されず、さらに少子高齢化を助長させるといった悪循環に陥ってしまいます。
その負のスパイラルに陥ると、経済成長より国民負担の増大が上回り、現状の国民の生活水準や質を担保できなくなる可能性があるのです。
進むICT化の波
生産年齢人口減少の課題に対して、今最も注目を集めているのがICTの活用です。
ICTとは、「Information and Communication Technology」(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の略で、「情報通信技術」とも訳されます。
ICT技術は、SNS上のやりとりや、ネット通販、チャット等で使われており、すでに身近なツールの根幹をなす存在です。また、ソフトウェア、通信、クラウド、ロボットといった技術の進化により、近年ではIoT(Internetof Things)・ビッグデータ・AI(Artificial Intelligence)といった新たなICTの潮流が注目されています。
こうした最先端のICT技術・デジタル技術を導入することで、業務効率化やコスト削減が可能が可能となり、少子高齢化が進む中でも企業活動の生産性向上が期待できるのです。
RPAの導入が働き方改革を後押しする!?
中でも、ホワイトカラーの業務効率化のために、ロボティックス分野で登場したのがRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)なのです。
RPAとはパソコン上の作業をソフトウェアロボットによって自動化することです。オフィス業務で手間のかかる、帳簿入力や伝票作成、日次・週次・月次集計、経費チェックなどの単純作業をRPAで代替することができれば、相当数の労働時間削減になります。その効果は労働力不足への対応、長時間労働の是正、業務品質の向上、人材の適正配置と有効活用、余剰時間での新規事業の創出など多岐に渡ります。
人は人にしかできない、より生産性の高いクリエイティブな仕事にシフトすることが可能となるのです。
年間4,000時間もの削減が可能!?ーRPAで働き方はどう変わる?
傘下にプロ野球の横浜DeNAベイスターズを持つIT企業の大手、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)では、RPAを導入し、年間4000時間もの効率化を実現しています。IT戦略部や人事部が主導となって取り組みが始まり、購買業務、アカウント管理、勤怠管理業務の自動化に着手。入退館記録システムと退勤システムをRPAで連携させ、2,500人分の勤怠をチェックするという作業が人の手から離れました。
※出典:『いちばんやさしいRPAの教本―人気講師が教える現場のための業務自動化ノウハウー』(進藤 圭)
他にも、月2万件の伝票処理を効率化させた三菱重工業、通関業務で商品明細のシステム入力の自動化で最大500分の業務時間を20分に短縮、業務時間 を96%削減した資生堂タイランドなど、各導入企業でRPAの効果が報告されています。
※出典:『RPAの真髄―先進企業に学ぶ成功の条件―』(安部 慶喜、金弘 潤一郎共著)
生産年齢人口減少による、人手不足や生産性低下への解決策の一つとして注目されるRPA。
次回は、RPAの特徴について見ていきたいと思います。