デジタル化やDX推進が叫ばれる日本。
2021年9月からデジタル庁が創設され、その流れはより一層激しくなることが予測されます。
しかし、DX推進やデジタル化と言ってもどうすれば、実現できるのでしょうか。
今回はDX推進で活躍できるツールをご紹介したいと思います。
DXとは?
「DX」とは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語で、直訳すると「デジタルへの変革」という意味になります。
経済産業省が2018年に出した「DXレポート」では「DX」次のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
参考資料:経済産業省: DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
DXの必要性
前述の「DXレポート」では、日本企業にとってDX推進が必須な理由が3項目にわたって述べられています。
IT人材の不足
IT人材不足は2015年時点で17万人とされており、2025年には43万人にまで拡大すると見込まれています。
海外では、DXを進める経営責任職であるCDO(最高デジタル・データ責任者)を設置する動きが2010年代初頭から加速しているそうです。
欧米を中心に世界規模で1万人以上のCDOが参加し、デジタル変革を進めるグローバルコミュニティも存在する。
しかし、日本でのCDOの設置は上場企業の一部のみに留まっており、国内企業の1%にも満たない状況になっています。
デジタル時代に日本の競争力を向上させるためにも、DXと正面から向き合うことが必要なのです。
レガシーシステムや既存システムの老朽化対策
多くの国内企業は、ITの専門家を育成し、強力なIT部門を作るのではなく、ITの開発から運用までを外部の専門企業に依頼してきました。
また、事業や部署ごとに個別のシステムを運営することも一般的です。
規模が大きい企業になればなるほど、一部だけでもシステムの改修を行うとすればその影響半は広くなり、多大な費用や工数が発生してしまいます。
そのため、システム改修や業務フローの変更や新しいシステムへの移行が行いにくくなってしまっているのです。
これまでの技術基盤で構築されているシステムであるレガシーシステムの刷新が急務となっているのです。
非常時のBCP(事業継続計画)対策としても
近年、大雨や台風、大地震、直近1年では新型コロナウイルスなどの自然災害や疫病のまん延で多くの企業がダメージを受けています。
また、サイバー攻撃によるシステムトラブルやデータ滅失等のリスクの高まりも不安視されています。
そのため、非常時に企業の業務がストップすること迅速に事業を復旧・継続する計画を立てるBCP対策が日本企業の重要な課題となっているのです。
ちなみに、「BCP」とは「Business Continuity Plan」の略で、「事業継続計画」という意味になります。
新型コロナ禍で、日本国中の企業がリモートワークや商談をオンライン会議で行うといった「新しい働き方」に移行していくことを求められました。
しかし、「新しい働き方」は浸透しきらず、一部企業を除いては課題を残す結果となりました。
業種業態によって、推進が難しい事業もありますが、働き方の変革に柔軟に対応できた企業はもともとDX化が推進されていたところが多く、それがBCPにつながったと言われています。
DX推進ツールの紹介
DXと一言で言っても、その実現手段は多種多様ですが、ここでは状況に応じたDXツールを紹介します。
オンライン会議ツール
テレワークや遠方の顧客とのやり取りを円滑にするツールです。
ビデオ通話だけでなく、ファイルの共有やチャット機能も備わっており、会議をしながらファイルやURLといった情報を共有することも可能です。
▼例
Google Meet、Microsoft Teams、Zoom
コミュニケーションプラットフォーム
多種多様なコミュニケーションツールを統合して使えるサービスの総称です。
様々な機能をもったツールを取りまとめ、コミュニケーションのプラットフォームを作ることで、「いつでも・どこでも・だれとでも」つながる最適なコミュニケーションの選択が可能になります。
▼例
NECネッツエスアイ、Bitrix24、LumApps
社内イントラネット
社内のコミュニケーションを円滑にするツールです。
企業や学校といった組織の限られたユーザーだけが使用できるネットワーク、つまり「社内」に限定した通信網ということになります。
社内SNSというイメージが近いかもしれません。
社員の相互コミュニケーションを活性化させたり、緊急情報の共有などに役立ちます。
▼例
社内Wiki:NotePM、Confluence、Dropbox Paper、DocBaseビジネスチャット・社内SNS:Slack、Microsoft Teams、Google Meet、LINE WORKS、Chatwork
オンラインストレージツール
ファイルを共有し送信、ファイル保存、データの送信に便利なツールです。
クラウド上に保管するため、どこからでもアクセスすることが可能です。
また、共有先を指定することもでき、社内・社外問わず共有する事もできます。
▼例
Dropbox、Google Drive、One Drive、Box
バックオフィスツール
会計業務を効率化する「会計ソフト」や、紙媒体を使わずに経費データを管理できる「経費精算システム」などがあります。
▼例
会計ソフト:freee、マネーフォワードクラウド会計、勘定奉行クラウド、弥生会計オンライン経費精算システム:マネーフォワードクラウド経費、ジョブカン経費精算、jinjer経費、楽楽精算
業務自動化ツール(RPA)
パソコン上の作業を自動化できるツールです。
繰り返しの単純作業などをRPAに代行させることで、労働時間の削減や人件費の削減につながります。
▼例
EzRobot、ロボパット、WinActor、BizRobo!、Blue Prism、UiPath、AutomationAnywhere
関連記事:パソコンの事務作業はロボットに任せる時代!?―RPAとは―
営業管理・マーケティングツール
企業のビジネスを拡大するため、マーケティングや営業活動を効率的・効果的に行うためのツールです。
顧客管理ができる「CRM」、営業管理ができる(SFA)、コンテンツを体系的に管理・配信できる「CMS」、リードの獲得・育成などを自動化できる「MA」などの種類があります。
▼例
CRM:Salesforce、Oracle CRM、Kintone、SanSanSFA:Salesforce、Sales Cloud、kintone、SensesCMS:WordPress、ferret OneMA:SATORI、b→dash、Salesforce Pardot、Kairos3
採用管理システム(ATS)
採用活動で必要な求人管理・応募者管理・選考管理といった一連の業務を効率化することができます。
▼例
HRMOS採用、採用一括かんりくん、ジョブカン採用管理、MOCHICA
ビッグデータ分析・解析、データ可視化ツール
企業のデータ分析と意思決定に広く応用できるツールです。
企業に蓄積された大量のデータを集めて分析し意思決定を助ける「BIツール」や、広告出稿・配信においてビッグデータやログデータを一元管理・分析できる「DMP」があります。
▼例
BIツール:Google データポータル、Salesforce Analytics、Yellowfin BI、TableauDMP:Rtoaster、diip、juicer、Yahoo! DMP、TREASURE DATA
生産管理システム(ERP)
販売管理・在庫管理・生産管理などを簡易的に行うことができます。
製造業の現場における情報(納期・在庫・工程・原価など)を一元管理し、「品質」「コスト」「納期」の最適化を図ることができます。
▼例
生産管理システム:WorkGear、i-PROERP3、Kit3、ProXact、Smart生産管理システム、TPiCS-XERP:GRANDIT、Microsoft Dynamics 365 Business Central、Oracle NetSuite、ZAC
まとめ
簡単にDX推進ツールをご紹介しましたが、ここでご紹介できたのはほんのわずかで、その他ITツールはごまんとあります。
すべてを導入することは時間とコストを考えると、DX化どころか本末転倒になってしまいます。
DXを推進していく上で、まずは自社の課題がどこにあり、どこに時間と労力がかかっているのかを考える必要があります。
その次に、棚卸した業務を見直し、会社の利益に直結するものかどうかを分別し、直結しないのならその作業はITツールで置き換えることができないかを判別していきます。
そうすることで、自社に本当に必要なツール=「手段」が見えてくるのではないでしょうか。
確かに面倒で時間のかかる作業です。
しかし、ここを乗り越えることができれば、時代の変革にスムーズに対応でき、10年20年と長く活躍できる基盤を作ることができるのではないかと思います。
<参考>
・デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する13のツール紹介
・書籍『現場が輝くデジタルトランスフォーメーション―RPA×AIで日本を変える―』(ダイヤモンド社)長谷川康一著